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9.12021
【知っとく!】特別受益と持戻し免除
結婚20年のプレゼント?
特別受益とは、被相続人から、遺贈を受け、又は結婚もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として受けた贈与のことを言います。
このような贈与を受けた相続人が、共同相続人のなかにいるときは、他の相続人との公平を図るため、贈与を受けた額を相続開始時の財産に加えて、相続分を計算します。
このような方法で計算をすると、贈与を受けた相続人の相続分は、他の同じ相続分の割合を持つ相続人よりも、減ることになります。
この原則の取り扱いとは反対に「特別受益の持戻し免除の意思表示の推定」規定が、平成30年7月6日の民法の改正で定められ、令和元年7月1日に施行されました。
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
出典:e-Gov法令検索
第4項を見てみましょう。
- 婚姻期間が20年以上の夫婦
- 配偶者に
- 居住建物またはその敷地について
- 遺贈または贈与をしたとき
↓
特別受益の持戻しを免除する旨の意思を表示したと推定します、となっています。
持戻しの免除を定めた趣旨は?
20年という長い時間、生活を共にした居住用の配偶者への贈与は、ご自身の亡き後の配偶者の生活を厚く保障するとともに、長年の貢献に報いる気持ちからで出たものと考えるのが、一般的な感覚とも合致します。
特に、住む場所である居住用不動産は、生活の基盤になるものです。
ですので、長期間にわたり夫婦であった、一方の配偶者への居住不動産の贈与は、持戻しの免除の意思表示をしたものと、法律上推定されるものとされました。
いつの時点で贈与された不動産に居住していることが必要?
民法第903条4項の規定は、贈与又は遺贈がされた時点での被相続人の意思を推定する規定です。
よって、原則として、贈与又は遺贈がされた時点で、不動産に居住していることが必要です。
もっとも、贈与又は遺贈の時点で、「近い将来居住する目的」があれば足りる、と解されています。
居住不動産に限られます
このように、居住用不動産は、長年連れ添った配偶者の生活の基盤となることから、遺産分割の場面で、持戻しの免除が推定されることになっています。
このような趣旨から、持戻し免除の意思表示の推定の対象となる財産は、居住用不動産のみに限られます。
知っとく!
20年という長きに渡り、生活を共にした夫婦の間では、共に財産の形成をしてきたと考えるのが社会通念上合致します。
配偶者の取り分から居住用不動産の贈与又は遺贈の分を減らしたい、という意図は、被相続人は持ち合わせていないと推察されます。
社会通念に沿う遺産分割が可能になったと、考えられます。
当事務所では、相続に関するご相談を承っております。