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【知っとく!】生存配偶者の居住権①

住み慣れた家に住み続けたい!

 

高齢化社会が進む事に伴い、配偶者の一方が亡くなっても、残された配偶者(生存配偶者)が住み慣れた家に住む権利を保護する必要性が高まりました。

このような必要性から、配偶者居住権として「長期」「短期」の二種類の制度が新設されました。

 

配偶者居住権(長期)

配偶者居住権とは、民法1028条で次のように定義されています。

(配偶者居住権)

第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

 

出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)

 

かつては遺産分割の場合に、配偶者が住居を相続すると、預貯金はわずかしか相続出来ないことがありました。

これでは、残された配偶者の老後の生活の安定をはかることはできません。

 

そこで、居住建物を「無償」で「使用及び収益する」権利を認めると共に、預貯金も遺産分割で取得できるようにしたのです。

 

どういうメリットがあるの?具体例

 

例えば、2,000万円の家と、3,000万円の預貯金を配偶者と子供一人が相続する場合を考えてみましょう。

相続財産は全体で5,000万円で、法定相続分は1/2ずつです。配偶者は2,000万の家の所有権を相続したら、預貯金からは500万円しか取得することは出来なくなります。

これでは、老後の資金としては心許ないといえます。

しかし、配偶者居住権としての評価額が1,500万円となると、配偶者は預貯金から1,000万円を取得することができます。

 

このようにすると、老後の住処の確保と、生活の安定の両方を図ることが出来ますね。

 

配偶者居住権の取得要件

 

配偶者居住権を取得するには、以下の要件が必要です。

  1. 被相続人の法律上の配偶者であること。事実婚の配偶者は対象ではありません。
  2. 居住建物が被相続人の単独所有か、もしくは被相続人と配偶者の共有であること。被相続人と第三者の共有の場合、配偶者居住権は成立しません。
  3. 相続開始時に、当該建物に配偶者が居住していること。
  4. 共同相続人との遺産分割、被相続人からの遺贈、被相続人との死因贈与契約、家庭裁判所の審判による取得であること
    • 特定財産承継遺言によることはできません。配偶者が、配偶者居住権の取得を望まない場合、遺贈であれば遺贈だけを放棄できますが、特定財産承継遺言だと、相続そのものを放棄しなければならなくなるからです。
配偶者居住権の取得効果

 

配偶者居住権を取得すると、どういったことが出来るのでしょうか?

  1. 居住建物を無償で使用又は収益することができます。
  2. 配偶者の居住していた、建物全部について成立します。
  3. 配偶者居住権の成立後に居住建物が配偶者の財産になることになっても、他の者が共有部分を所有するときは配偶者居住権は消滅しません。
  4. 特別受益者の持ち戻し免除の意思表示の推定に関する規定を、配偶者居住権の遺贈について準用します。
  5. 配偶者居住権の財産価値に相当する金額を相続したものとして扱います。
  6. 配偶者居住権の帰属主体は配偶者に限られ、譲渡が制限され、相続の対象になりません。
  7. 配偶者居住権は、建物全部について成立するので、居住の目的の範囲内であれば、従前の用法と異なる用法でも所有者の承諾なく使用することができます。

 

第三者に対しては、配偶者所有権の登記をしなければ対抗できません(民法605条準用)。

この登記は、居住建物の所有者が設定登記の義務を負います。

 

配偶者居住権の消滅

 

  1. 原則として、配偶者の死亡によって終了します。しかし、例外的に、遺産分割協議、遺言、審判において別段の定めをすることができます。
  2. また、居住建物が配偶者の全所有になる場合にも消滅します。
  3. 居住建物が消失した場合にも消滅します。
  4. 配偶者居住権を、当該配偶者が放棄した場合にも消滅します。
  5. 配偶者居住権が消滅すると、居住建物を返還しなければなりません。ただし、居住建物の共有持分を有する場合は除きます。

 

以上のように、配偶者居住権は、住み慣れた家に住み続けるといった「居住建物を使用する権利」があれば良い、として創られた制度です。

 

知っていると安心ポイント!

 

今回は、配偶者居住権の「長期」制度についてご説明しました。

次回は、配偶者居住権の「短期」制度についてご説明します。

もちろん、すべて暗記する必要は全くありません!このような制度があると、知っているだけで配偶者亡き後も、住み慣れた家に住み続けることが出来る可能性がある、と安心出来ますね。

 

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