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7.142021
【失敗しない!】遺留分を放棄したい場合
遺留分は、いらない?
「遺留分」とは、相続に際し、相続財産の中から一定の相続人に対して法律上必ず留保されなければならない一定の割合です。
遺言書に、自分の遺産がある場合にも、遺留分を放棄したい場合、どのようにしたらよいのでしょうか?
また、「相続の放棄」と「遺留分の放棄」とはどのような違いがあるのでしょうか?
ご説明してゆきます。
「相続の放棄」と「遺留分の放棄」との違い
相続の放棄とは
相続放棄(民法938条以下)とは、その相続に関して、初めから相続人とならなかったものとされる制度です。
初めから相続人とならなかったことになるのですから、遺留分もありません。
また、法定相続の場合、相続分は同順位の者は頭数で均等割りとされるので、一人が相続放棄をすると、頭数が減り、結果として他の者の相続分が増えることとなります。
相続放棄は、相続が始まってから認められるので、被相続人の死後「相続開始と自己が相続人であることを知ってから3ヶ月以内」に家庭裁判所に申述しなければなりません。
遺留分の放棄とは
これに対し、遺留分の放棄は、被相続人の生前にもすることが可能です。
生前にするか、死後にするかで、手続きが変わってきます。
〈生前の場合〉
遺留分権利者本人が、家庭裁判所に申出て、遺留分放棄の許可を受けなければなりません(民法1049条)。
なぜなら、不当に遺留分の放棄を迫るなど、遺留分権利者を害することが無いようにするため、家庭裁判所に、遺留分の放棄が真意からなされたものか、判断してもらう必要がある
からです。
家庭裁判所に遺留分の放棄の許可が認められるには、
- 遺留分の放棄が本人の真意から出たものであること
- 合理的な理由があること
- 放棄の代償があること
が、要件として必要になります。
〈死後の場合〉
死後に遺留分の放棄をするには、遺留分を放棄する旨の意思表示のみで足ります。
死後の遺留分の放棄には、生前の時のように、遺留分権利者を不当に害することが無いからです。
また、遺留分侵害請求権を行使しないことによっても遺留分の放棄と同様の結果が生じます。
遺留分放棄をしても、他の相続人の相続分は増えません。
被相続人が処分できる遺産が増えるのみとなります。
遺留分の放棄をしたら撤回できない
遺留分を放棄したら、原則は撤回が出来ません。
よって、熟慮してから決めることをお勧めします。
また、遺留分放棄をした者の子が、代襲相続をした場合、その子に遺留分はありません。
代襲相続をする者は、被代襲者が受けるべきであったものと同じ権利しか受けられないので代襲相続をする者も、遺留分は無いこととなります。
遺留分の放棄をするメリット
遺留分の放棄をするメリットは、不公平な遺言書を遺しても、相続人間のトラブルが無くなることです。
例えば、分割しずらい事業を、長男にのみ相続させたい場合、次男は既に私立の医学部の学費を数千万出して貰っているから、と言う理由で、遺留分を放棄すると、トラブルの発生の芽が無くなります。
失敗しない!ポイント!
今回の失敗しない!ポイントは、「相続の放棄」と「遺留分の放棄」は、全く違うものだということです。
相続の放棄は、初めから相続人ではなかったことになるのですから、プラスの財産もマイナスの財産も相続しません。
これに対し、遺留分の放棄は、遺留分についてのみ放棄するので、相続権は失われず、被相続人にマイナスの借金があって引き継ぎたく無い場合には、相続放棄の手続きが必要になってきます。
相続の放棄と遺留分の放棄を、間違えないようにしたいものですね。
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