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8.12021
【失敗しない!】配偶者居住権があるとき守ること
配偶者居住権があるとき、守ること
配偶者居住権があると、住み慣れた家に住み続けることができます。
同時に、守らなければならない義務も生じます。
ご説明してゆきます。
1.居住建物の使用および収益
配偶者居住権が生じると、居住建物の全部を、使用・収益をすることができます。
そして、それに必要な限度で敷地を利用することができます。
居住建物の使用・収益をする場合には、「善良なる管理者の注意」をもってしなければません(民法第1032条第1項)。
では、善良なる管理者の注意とは、どのような注意のことでしょうか?
民法には2種類、注意義務が定められています。
この「善良なる管理者の注意」と「自己のためにするのと同一の注意」です。
善良なる管理者の注意は、自分のものに対してする扱いよりも、より高度な、丁寧な扱いをすること、と理解してくださるとよいと思います。
例えば、賃貸物件に住んでいる場合、壁紙や窓を傷つけると、弁償する義務が発生します。
このように、配偶者居住権があることで、居住が許されている場合には、居住建物を大切に扱うよう、守らなければなりません。
2.譲渡、無断で第三者に使用させることの禁止
配偶者居住権は、住み慣れた家に相続開始後も住み続けることができるよう、認められた制度でした。
ですので、第三者に譲渡することを認めると、その制度と相容れないこととなってしまいます。
よって、譲渡はできないと、規定されています(第1032条第2項)。
また、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることはできません(第1032条第3項)。
あれ?では所有者の承諾があれば、第三者に貸すことができるの?
と思われたかたもいらっしゃると思います。
これは、配偶者が、介護施設に入るなどの事情が生じた場合に、配偶者居住権の価値を回収することが、必要であることから、認められています。
3.無断で増改築することの禁止
配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の増改築をすることはできません(第1032条第3項)。
4.居住建物の修繕
居住建物の修繕が必要な場合には、まずは配偶者が修繕することができます(第1033条第1項)。
居住建物の所有者は、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときに修繕をすることができます(同条第2項)。
5.費用負担
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担します(第1034条第1項)。
通常の必要費とは、居住建物の保存に必要な通常の修繕費のほか、居住建物やその敷地の固定資産税が含まれると、考えられています(最二判昭和36年1月27日民集48号179頁)。
守らなかった場合にはどうなるの?
配偶者が、上記1~3の守らなければならないことに違反した場合、まず、所有者は配偶者に相当の期間を定めて改めるように、催告をします。
次に、催告に応じなかった場合には、所有者は、配偶者に対する意思表示によって、配偶者居住権を消滅させることができます(第1032条第4項)。
また、配偶者が、善良なる管理者の注意義務に違反し、損害を生じた場合には、所有者は、居住建物の返還を受けた時から1年半以内に、損害賠償請求及び費用償還請求をすることができます(第1036条において準用する第600条第1項)。
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