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遺留分を侵害する遺言書

遺留分制度

 

例えば、父親が亡くなり、母親と三人の子供が残された場合を想定してみましょう。

法定相続分(民法900条)は、母親が1/2、子供は頭数で均等割、ですので、今回のケースでは子供は遺産の1/2を頭数3で割った、1/6となります。

 

法定相続分とは、被相続人が相続分の指定をしなかった場合に法律の規定によって定まる相続分でしたね。(参照:相続分の決め方

では、今回のケースのように、相続分の指定がしてあり、それが、だれか一人に偏った内容である場合はどうなるのでしょうか?

 

遺留分制度の趣旨

被相続人は、自己の財産をどのように処分しても、原則は自由です(遺言の自由)。

しかし、一方において、配偶者や子供といった、一定の身分関係にある人は、被相続人の資産に頼りながら生活し、その資産を承継してゆく期待を持ちながら生活しています。

遺言の自由と相続人の期待との間の調整を図るために遺留分(民法1028条以下)の制度があります。

民法では、一定の範囲の法定相続人には、遺留分として、遺産に対しての優先的権利を認めています。

 

遺留分を持つ法定相続人とその割合

では、具体的に遺留分を持つ法定相続人とその割合を見てゆきましょう。

遺留分権者は、兄弟姉妹を除く法定相続人です。

配偶者、子とその代襲者、直系尊属です(民法1028条・同1044条・同887条2項、3項)。

割合は以下の通りになっています。

以前の法定相続分の表に、遺留分も加えました。

相続人 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 全て 1/2
配偶者と子 配偶者1/2、子1/2 配偶者1/4、子1/4
配偶者と直系尊属 配偶者2/3、直系尊属1/3 配偶者1/3,直系尊属1/6
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 配偶者1/2、兄弟姉妹なし
子のみ 全て 子1/2
直系尊属のみ 全て 直系尊属1/3
兄弟姉妹のみ 全て なし

兄弟姉妹以外は、法定相続分の1/2になります。

 

今回のケースの場合

被相続人が誰か一人に偏って遺産を残した場合でも、その効力に影響はありません。

よって、相続人が採る方法は、被相続人の意思を尊重し、遺言書の通りの遺産相続をするのが一つ。

もう一つは、遺留分相当の分を取り戻すため、遺留分減殺請求権(民法1031条)を行使することです。

 

全員が納得する相続のために

行政書士は、もめごとを予防するための専門家です。

遺留分に配慮した、残された相続人が納得する、いい遺言書を作りたいものですね。

 

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