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遺言の執行者になったら?

遺言の執行が、始まる

 

父が亡くなった。

ああ、この時が来てしまった!

僕は長男で、生前父から遺言執行者に指定されている。

母も妹もそのことは承知だ。

ただ、僕だけが知っていることがある。

そのことを遺言の内容と共に母と妹に告げなければならない。

 

父は一代で、地方では名前の通った会社を築いた。

その道のりは決して楽なものでは無かったらしい。

母と知り合う前、まだ会社とも言えないくらい小さな工場だった頃、父は女性と暮らしていた。

その女性との間に、僕から見たら異母兄弟がいるそうだ。

父はその人のことがとても気になっていて、せめて死後認知をしてあげたい、と生前僕に相談してきた。

僕は最初はびっくりしたけれど、だんだんと嬉しくなってきた。

兄ってどんな人だろう。

僕には妹しかいなかったから、兄がいたらいいなとずっと思っていた。

それから少しずつ兄と会うようになった。

僕たちは、まるで最初から兄弟だったみたいに親しくなった。

父にもしもの事があったら2人で会社を守ろう、そう約束もしていた。

けれど。

母と妹は決して許してはくれないだろうな。

名家の出で気位の高い母と、まるで双子のような妹。

ああ、僕に父の遺言の執行者が務まるだろうか?

 

遺言の執行者が必要な場合は?

遺言の執行者とは、遺言者に代わり、遺言の効力発生後その内容実現に向けて必要な事務一切を行う者を言います。

このように、スムーズな遺言の実現のためにある制度ですので、民法では、以下の場合に遺言執行者を定めなければならないとしています。

遺言によって法定相続人を廃除し、またはその取消しをする場合(民法893条.894条)

遺言で自分の子供を認知する場合(民法781条2項.戸籍法64条)

今回の「僕」の相続のケースでは、父の遺言書で兄の認知がされますので、遺言執行者が必要なケースです。

 

遺言の執行者に相続人がなれるの?

このケースの「僕」は、父である亡くなった人(被相続人)の息子であり、法定相続人にあたります。

遺言執行者になることが出来る人は、法律で定められています。

未成年者と破産者

以外の人(民法第1009条)

ですので、相続人であっても遺言の執行者になることが出来ます。

 

遺言の執行者がとりおこなう事務

遺言執行者は以下の事務を行います。

  1. 財産目録の作成と交付
  2. 関係者への通知
  3. 遺言執行の説明
  4. 相続財産の把握と管理
  5. 身分行為や名義変更の手続き

今回のケースの遺言認知は、5の「身分行為」にあたります。

遺言執行者である「僕」は、父が亡くなって遺言執行者に就任してから10日以内に、認知届を役所に届出なければなりません(戸籍法第64条)。

 

復任権を行使したり、辞任もできる!

今回のケースの「僕」は、母や妹が突然父に隠し子がいたことを知り、もめごとが起ることを恐れています。

母と妹の怒りの矛先が「僕」に向かい、もめごとになってしまった場合には「僕」は次のような方法を採ることも可能です。

  • 遺言執行者としての事務を遂行することができないやむを得ない事情がある場合には、第三者にその任務を行わせることができる(復任権1016条1項)。
  • 遺言執行者に選任されたことが負担であって、職務遂行ができない場合には、辞任することが許される(民法1019条2項)
  • 辞任する場合には、遅滞なく相続人に辞任を通知し、家庭裁判所に代わりの遺言執行者の選任を請求する(民法1010条)。

 

遺言の執行者の事務は、大変負担の大きいものです。

もめごとが起りそうな場合には、弁護士に遺言執行者を依頼することが最善だと思われます。

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