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7.32021
法定後見制度と任意後見制度の違い③
任意後見人が出来ること
ブログ「法定成年後見制度」で、法定後見人が出来ることについてご説明しました。
では、任意後見人は、ご本人のためにどのようなことができるのでしょうか?
任意後見人の出来ることは、本人の財産管理と療養看護や生活面での援助です(任意後見契約に関する法律:第2条)。
本人の財産管理とは、預貯金の管理や家賃の支払い、税金の支払い、公共料金の支払い等を言います。療養看護や生活面の援助とは、介護サービスの手続き、介護費用の支払い、医療契約の締結、入院手続き、入院費用の支払い等です。
この、事務の内容については、任意後見契約書に記載します(同法第3条)。
任意後見人が出来ないこと
1.代理権は定められた範囲のみ
このように、任意後見制度は、代理権を付与されて事務を行う「委任契約」であることから、出来ることは契約などの法律行為に限られます。
ですので、おむつ替えなどの介護をしたり、部屋の掃除をしたりといった、事実行為は含まれないことになります。
また、任意後見人の代理権の範囲は、任意後見契約に記載された、限られたものとなります。
もし、後見が始まってから、取り決めていなかった代理権を付け加えたいと思っても、後から付け加えることはできなくなります。
2.取消権が無い
もう一つ、法定成年後見人に出来て、任意後見人に出来ないことは、ご本人がした契約を取り消すことが出来ないことです。
成年後見人には、日用品などの買い物を除いて、契約を取り消すことができます。
しかし、任意後見人にはこの取消権がないため、ご本人が不必要なものを買う契約をすることが頻繁にある場合には、任意後見を終了して、法定後見に変更する必要が出てくる可能性があります。
任意後見制度のメリットデメリット
以上のように、任意後見制度はご自身がこの人なら、という人を定めて、委任する事ができます。そして、その内容も、ご本人の意思に沿ったものになる可能性が高いものです。
しかし、当初予定していなかった事務が発生する状況になった場合や、ご本人の為にならない法律行為をしてしまった場合には、ご本人の保護として十分に機能しない場合も出てきます。
まとめ
この文章を読んで下さる皆様の中には、「ご自身にとってどの制度がいいのだろう?」もしくは、「親御さんにんとってどの制度がいいのだろう?」と、周囲の状況に照らし合わせて思案されている方も多いと思います。
置かれている状況は、それぞれだと思います。
任意後見制度は、高齢化社会が進むにつれ、ますます利用されてゆくものであると考えます。
また、デメリットを払拭するものとして、家族信託も盛んになってきています。
家族信託と任意後見制度を併用する型が、現在のところ最も安心出来る方策なのではないかと考えます。
それでも、ご本人がリタイアされている状況か、個人事業主であるかで、また状況は変わってきます。
ご本人とご家族が、安心して暮らすことが出来る準備をしてゆきたいですね。
家族信託については改めてご紹介させていただきます。
当事務所へのお問い合わせは、こちらから承ります。