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8.52021
【知っとく!】死後離婚と祭祀の承継
死後離婚は法律用語ではありません
死後離婚という言葉を聞いたことのあるかたも多いと思います。
死後離婚という言葉は、正確には、法律用語ではありません。
婚姻関係は、配偶者の死亡によって終了するので(民法728条)、死亡した配偶者と離婚することはできないことになります。
正確には、のこされた配偶者の親族との「姻族関係の終了届」を提出し、配偶者の親や兄弟との親族関係を終了させることを指しています(民法728条2項・戸籍法96条)。
姻族関係終了届の提出にひつようなもの
姻族関係終了届は、生存配偶者の本籍地または住所地の市区町村役場に提出します。
このとき、死亡配偶者の親族の同意は必要ありません。
また、死亡配偶者の親族からの姻族関係の終了はできません。
- 届出人の印鑑・本人確認書類
- 届出人の戸籍謄本(届出人の本籍地の市区町村役場に提出する場合は不要です)
- 死亡配偶者の除籍謄本
- 姻族関係終了届は、市区町村役場に備えてあります
姻族関係の終了の届出をすれば、その日のうちに、姻族関係が終了します。
また、あとで取り消したい、と思っても、取り消すことはできません。
姻族関係終了をしたら、死亡配偶者の親族との関係はどうなる?
姻族関係の終了をすると、死亡配偶者の親や兄弟姉妹、甥姪との姻族関係は終了します。
民法では、同居の親族は互いにたすけ合わなければならないとされ、特別の事情がある場合には、三親等内の親族間においても扶養義務が生じる可能性があることが定められています。
姻族ではないことの効果として、扶養義務は無くなります(民法730条、民法877条1項)
(親族間の扶(たす)け合い)
第七百三十条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶(たす)け合わなければならない。
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)
遺産はどうなる?相続できる?
遺産相続については、姻族関係終了届の提出の影響は受けません。
なぜなら、姻族関係終了届の提出は、死亡配偶者の親族との関係を終了するものであり、死亡配偶者との関係を終了させるものではないからです。
よって、遺産相続に影響はなく、すでに相続しているものも返還する必要はありません。
また、死亡配偶者との間に子どもがいる場合を考えてみましょう。
その子どもにとっては、姻族関係の終了の相手方である義父母は、おじいさん、おばあさんにあたります。
おじいさん、おばあさんとの法的関係も、姻族関係終了届けの提出によって、変わることはありません。
おじいさん、おばあさんが亡くなった場合には、遺産相続ができる場合があります。
遺族年金はどうなる?受給できる?
姻族関係終了届を提出しても、遺族年金は受給できます。
遺族年金は、亡くなった人の配偶者等遺族に支払われるものなので、姻族関係が終了することと関係ないからです。
よって、遺族年金がある場合には、受給できることになります。
戸籍や氏はどうなる?
戸籍には、「姻族関係終了」という文字が入ります。
氏は、姻族関係終了届によっては、変更はありません。
「復氏届」を提出することにより、婚姻前の氏に戻ることができます。
姻族関係の終了と、祭祀の承継との関係
婚姻関係終了届を出し、復氏をすると、祭祀承継者を決め直さなければなりません(民法769条)。
(離婚による復氏の際の権利の承継)
第七百六十九条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める
出典:e-Govポータル
実際には、姻族関係終了届を提出するに至った背景には、義両親との関係に問題がある場合が多いと思われます。
そういった状況で、この、祭祀の承継者を決め直す話し合いをすることは、むつかしいと思われます。
よって、祭祀を承継する場合、また祭祀を承継した場合に姻族関係の終了を考えている場合には、そのあとのことまで考えておく必要があると言えます。
知っとくポイント
今回は姻族関係終了届についてご説明しました。
ご家族との関係はさまざまで、答えの出ないことも多いと思います。
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