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7.92021
【知っとく!】生存配偶者の居住権②
配偶者居住権(短期)
高齢化社会が進む事に伴い、配偶者の一方が亡くなっても、残された配偶者(生存配偶者)が住み慣れた家に住む権利を保護する必要性が高まりました。
このような必要性から、配偶者居住権として「長期」「短期」の二種類の制度が新設されました。
今回は、配偶者短期居住権について、ご説明してゆきます。
配偶者が亡くなり、住んでいた建物の所有権が配偶者から別の人に移ると、原則として生存配偶者は住み慣れた家から退去しなければなりません。
配偶者短期居住権は、残された配偶者のため、6ヶ月という限られた期間は最低限、居住の権利を認めようという規定です。
その6ヶ月の間に別の住居を見つけ、退去の準備をすることが出来るようにと認められた期間です。
配偶者居住権との大きな違いは、次の4つにあります。
- 成立要件を満たせば相続開始時に当然に権利が発生すること
- 遺産分割や遺贈による必要がないこと
- 存続期間が短いこと
- 登記をして対抗要件を備えることができないこと
配偶者短期居住権は、民法1037条で次のように定義されています。
(配偶者短期居住権)
第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
出典:e-Govポータル
配偶者短期居住権の取得要件
配偶者短期居住権を取得するには、以下の要件が必要です。
- 被相続人の法律婚の配偶者であること。事実婚の配偶者は対象になりません。
- 居住建物が被相続人の所有に属したものであること。被相続人と第三者の共有の場合にも、配偶者短期居住権は成立します。
- 相続開始時に、当該建物に配偶者が居住していること。
- 配偶者が相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合には、配偶者短期居住権を取得できません。
- 配偶者が相続を放棄した場合にも、配偶者短期居住権を取得できます。
- 配偶者が相続開始時に配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は成立しません。
配偶者居住権の取得効果
配偶者短期居住権を取得すると、どういったことが出来るのでしょうか?
- 居住建物を無償で使用することができます。しかし、収益することは出来ません。
- 配偶者の居住していた、建物全部について成立します。
- 配偶者短期居住権はの取得は無償であり、具体的相続分からその価格を差し引く必要はありません。
- 第三者対抗要件を備えることはできません。
- 配偶者居住権の帰属主体は配偶者に限られ、譲渡が制限され、相続の対象になりません。
配偶者短期居住権の期間
配偶者短期居住権の期間は、常に6ヶ月間は認められることになります。
以下、見てゆきましょう。
- 居住建物について、配偶者を含む共同相続人の間で遺産分割をする場合には、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日、又は、相続開始から6ヶ月を経過する日、のいずれか遅い日を終期とします。
- 上記以外の場合には、居住建物所有者が配偶者短期居住権の消滅の申入をした日から6ヶ月を経過する日を終期とします。
配偶者居住権の消滅
- 配偶者の死亡によって終了します
- 居住建物の取得者からの請求によっても消滅します。
- また、居住建物が配偶者の全所有になる場合にも消滅します。
- 居住建物が消失した場合にも消滅します。
- 配偶者短期居住権が消滅すると、居住建物を返還しなければなりません。ただし、居住建物の共有持分を有する場合は除きます。
知っていると安心ポイント!
今回は、配偶者居住権の「短期」制度についてご説明しました。
配偶者が亡くなり、住み慣れた家の所有者が変わっても、6ヶ月間は住み慣れた家に住み続けることができます。
突然の配偶者の死によって、すぐに住む家を立ち退くことが無いように、生存配偶者を保護する為の規定です。
まとめ
配偶者居住権は、新制度として、生存配偶者の居住の権利を守る為に設けられたものです。
ご自身亡き後、残された配偶者が遺産分割で不利になり、住み慣れた家から出ていかなければならなくなるかも知れない。
そのような事態を避けるため、残される配偶者の為にも、遺言書を準備しておくと安心ですね。
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