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9.292021
親の介護で寄与分が認められる場合は、まれです【もめない相続】
寄与分について知った日
私は53歳。
今までずっと親と暮らしてきた。
この暮らしに不満は無い。
生まれ育った家は広々していて居心地がいいし、父も母も優しい。
ここ3年は、父の具合が良くなくて心配している。
玄関で転んで骨折してから、少しまだらボケが出てきたみたい。
母ももう80歳だし、大きな父の体を支えて歩くのは無理になってきた。
週二回の病院への送り迎えは、私が車でしている。
食料品や日用品の買い物も私だ。
父や母はすまなさそうにしているけど、私は家事をする自分が頼りにされるのが、少し嬉しい。
私がしっかりして両親の面倒を見るんだ。
たった一人の姉はイギリスにお嫁に行ったから、当てにはならない。
そういえば、この間病院の待合室で隣に座ったお婆さんが私にこんなことを言った。
「いい娘さんだね。お父さんとお母さん、たくさん遺産を残してくれるよ!私ならそうするね」
え?親の世話をしたら、沢山の財産がもらえるの?
家に帰って調べたら「寄与分」というらしい。
なんだか嬉しくなってきた。
「やっと、美人で頭が良くって国際結婚した姉よりも、私が勝てるものができた。寄与分で姉より沢山遺産を貰うんだ!」
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共同相続人の中に、被相続人の事業に協力して財産的価値を高めたり、療養看護に努めたりして亡くなった人の財産の増加・維持に貢献した人がいる場合には、相続人の財産の中に「寄与分」が含まれると考えます。
では、寄与分が認められるには、どのような要件が必要でしょうか?
- 共同相続人であること
- 寄与行為をすること
- 「特別の」寄与と評価されること
- 被相続人の財産の維持・増加があること
- 寄与行為と被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係があること
ここで大切なことは、寄与分が認められるには、「特別の」寄与があったと認められることです。
つまり、通常の家族間の扶助・扶養義務(民法第752条・第877条第1項)を超える貢献があったと認められることが必要です。
かつその寄与に対して、相応の対価や補償を得ていない事が必要となってきます
要介護度で見てみると、歩行や移動に手助けが必要なことがあり、食事・着替えはなんとか自分でできても、はいせつや入浴には一部手助けが必要な場合である、要介護2以上の状況にあったか、が基準となっています。
寄与者の相続分は?
法定相続分で寄与者の相続分を計算する場合、どのようになるのでしょうか。
- 被相続人が相続開始の時に有していた財産-寄与分=みなし相続財産
- みなし相続財産をもとに、法定相続分で各自の相続分を計算します。
- 寄与者は、2で出た額に寄与分を加えて相続分とします。
このケースの場合は?
では、今回のお話のケースの「私」の場合、寄与分は認められるのでしょうか?
ここまでで話した1~5の基準に当てはめて考えてみます。
寄与分が認められる要件1~5までの、1,2は満たしています。
問題は、3~5です。
3は、両親が用介護認定2以上の状況にあるかで変わってきます。
また、要介護2以上であっても
「私が介護したことにより、介護サービスへの支払をしなくて済んだ。その分、財産が残った」
という要件4,5を満たしていなければなりません。
寄与分を考慮した遺言書を
介護による寄与分を認められるには、かなりの労力をようする介護を、長い期間続けなければならないことになります。
大切な両親とはいえ介護は先の見えない、厳しく辛いものでもあります。
家族の中で、家族の世話に特に尽力した者がいる場合、遺言書でその貢献を考慮した配分を考える事が出来ます。
そして、感謝の気持ちやその相続人に特に厚く遺産を残した心情を、付言事項としてしたため、相続人に伝えることも可能です。