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7.232021
【失敗しない!】特定の財産を特定の相続人に譲りたい場合
自宅の土地建物を長男に相続させたい
例えば、遺産のうち、自宅の土地と建物を、既に被相続人夫婦と同居している長男に相続させたい、と言う場合を想定してください。
相続人が何人か居る場合には、相続開始後、遺産分割前にはその遺産は共同相続人の共有となり、一人の相続人に帰属させるには、遺産分割協議が必要になります。よって、遺産分割協議が整うまでは、長男は単独で自宅の土地建物の相続登記をすることが出来ないことになります。
このような場合に、「自宅の土地と建物を長男に相続させる」旨の特定財産承継遺言をすれば、以下のような効力が生じます。
特定財産承継遺言の効力
- 当該遺言に基づく承継を受益相続人(上記の場合の長男)の受諾の意思表示に委ねる、などの特段の事情が無い限り、当然に、相続開始時に特定の財産が受益相続人に帰属します。
- 当該遺言書に基づいて生じた受益相続人への不動産所有権の移転については、受益相続人は、相続を原因とする所有権移転登記手続きを、単独ですることができます。
- 法定相続分を超える指定を受けた相続人は、超えた部分については、対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することはできません。不動産の場合の対抗要件は、登記を備えることになります(第899条の2第1項)。
- 上記より、遺言執行者がいる場合には、その遺言によって財産を承継する受益相続人のために対抗要件を具備する権限を有することが明文化されました(第1014条2項)。
特定財産承継遺言と遺贈とはどう違うの?
ここまでのお話で、「では遺贈したらいいのでは?」とお考えになった人もいらっしゃるかも知れません。特定財産承継遺言は、遺贈と良く似ています。
では、違いはどこにあるのでしょうか?
- 特定財産承継遺言は相続人に対してしかできない
- 特定財産承継遺言を放棄した場合、相続であるので、相続人としての資格を失う。
- 遺贈の場合は相続で無いので、遺贈を放棄しても相続人であった場合には相続人として他の財産を相続できる
上記の違いを見ると一見特定財産承継遺言の制度の方が遺贈より不利なようにも見えます。
しかし、
- 受益相続人が単独で登記を出来る
- 農地を特定財産として相続する場合、農業委員会の許可が不要になる(農地法第3条による農地の権利の移転・設定の許可)
- 賃借権を相続する場合、賃貸人の承諾が不要になる
- 相続するものが債権であった場合には、受益相続人が債権者に通知すれば足りる(民法899条の2第2項)。
など、相続として扱う事により、メリットが沢山生じることとなります。
よって、どうしてもこの財産はこの子に、という場合には、特定財産承継遺言を利用することが有効です。
失敗しないポイント!
特定財産承継遺言のメリットについてお話してきました。
しかし、特定財産承継遺言の解釈については、相続人にとって悩ましい部分もあります。
例えば、
- 特定の財産のみを、相続人に遺す意図で書いた遺言書か?
- 法定相続分にプラスして遺す意図か?
- 法定相続分の中に、特定財産を含める意図か?
など、解釈が分かれるケースがあることです。
曖昧さを無くすには、相続財産を全てリストアップし、それぞれどれを誰に遺すか、また分割方法を指定しておくことをお勧めします。
当事務所では遺言書・相続についてのご相談を承っております。
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