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【準備OK!】自筆証書遺言を作成するには

遺言書の要式性

 

かつて、自筆証書遺言は、その全部を自書しなければなりませんでした。

このような厳しい要式が負担となり、自筆証書遺言の利用が進まないというデメリットがありました。

そこで、平成30年に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」では、自筆証書遺言作成の要件を緩和しました。

 

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

出典:e-Gov法令検索

自筆証書遺言の全部を、自書としていた目的は?

そもそも、自筆証書遺言にそのような厳格な要式を要求した趣旨は、後に疑問が生じないようにすると同時に、遺言書の偽造・変造を避け、遺言者に慎重な配慮を求めるためです。

そこで、遺言書に添付する財産目録については、遺産の対象となる財産を特定するだけの形式的な事項であることから、自書を要求する必要性が低いと考えられ、新法では自書を要しない、と改められました。

 

財産目録については自書でなくても良い

上記のような趣旨から、財産目録はパソコンなどで作成して良いこととなりました。

そして、偽造・変造を防ぐため、自筆証書に自書によらない財産目録を添付する場合には、その目録の「毎葉」ごとに署名・押印しなければならないこととなりました(民法968条第2項)。

これによって、遺言者以外の者が作成した目録が添付されることを、防ぐことが出来ます。

また、自書によらない財産目録の記載が両面に及ぶ場合には、その両面に署名・押印をしなければならないことになっています。

例えば、財産目録の裏面が白紙である場合には、裏面にほかの財産を記載する方法で、遺言書を変造することを防ぐことができます。

 

自筆証書遺言の本文は、全文自書する必要あり

法改正により、財産目録については、自書でなくても良いこととなりました。しかし、遺言書本文自体は、民法第968条第1項に定める方式を満たす必要があります。

具体的にご説明します。

  • 本文・日付・氏名については自書します。
  • 遺言書が複数ある場合には、日付の新しいものが優先となり、また、遺言書の最終意思の確認にもなるので、年月日は正確に書かなければなりません。
  • 戸籍名を自筆で署名します
  • 印は認印でも可能ですが、トラブル防止のために実印が望ましいです。
  • 自筆証書遺言・財産目録の各ページ、それぞれに署名・押印しなければならず、一つの署名で本文、財産目録両者の署名・押印を兼ねることは出来ません。
  • 本文・目録ともに加除その他の変更がある場合には、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して、これに署名し、かつ、その変更の場所に捺印しなければなりません。目録に関する加除変更は、変更内容を自書することを要さず、古い目録に取り消し線を引いて新たな目録を追加するという方法でも可能です。

 

 

財産目録の作成方法

財産目録については、各ページの署名押印を求める以外に、特別な方法は定められていません。

ですので、遺言者がパソコンなどで作成した財産目録を添付すること、また、遺言者以外の者が作成した財産目録を添付すること、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーなどを財産目録として添付することも可能です。

 

準備OK!

自筆証書遺言の要式性が緩和された趣旨は、遺言作成を簡便にすることにより、遺言を利用する人を増やし、よって、相続に関する争いごとを予防し、また、近年問題となっている相続登記がなされず放置される不動産の問題を解決することが期待されているところにあります。

 

遺言書を正しく作成し、のちのもめごとを防ぐ事が出来ると安心につながりますね。

 

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